フランツ・リスト『ショパンの藝術と生涯』(モダン日本社)

フランツ・リスト『ショパンの藝術と生涯』 1940年代

書籍名:ショパンの藝術と生涯
著者:フランツ・リスト
訳者:蕗澤忠枝
出版社:モダン日本社
発刊日:S17/10/19
価格:1圓80錢
頁数:292
発行部数:3,000
備考:フランツ・リストの書いたショパン伝です。ショパンと直接交流のあったリストが筆をとり、ショパンが亡くなってからわずか3年後の1852年に出版されています。しかし、そのわりにはこの伝記は冷遇されてきたのではないでしょうか?

理由はいろいろあるとは思いますが、まずよく引き合いに出される話として「リストはショパン伝を書くにあたり、ショパンの家族に協力を求めたが断られた」ということ、ここでまず誤解が生まれているようです。この話自体は事実です。リストはショパンの姉ルドヴィカに協力を求めました。でも断られています。ただ、誤解されやすいのはルドヴィカがリストのことを嫌って断ったというふうに思われがちだということです。本当にそうなのでしょうか?ルドヴィカがリストに対し協力を断った理由については推測するしかありませんが、以下のエピソードを紹介します。

ルドヴィカはショパンの死後、その遺品の処分をめぐって夫カラサンティと諍いがあったことは比較的よく知られています。ただ、この確執は思いの外深刻で、夫の前ではフレデリックのことを口に出すことすら禁じられていたとのことです。そしてそれは夫カラサンティが死ぬ1853年まで続きます。リストの書いたこの伝記が出版されたのは1852年です。みんなの思い出が消えぬ間にと、人の好いリストは良かれと思って急いで書いたのでしょう。でも急ぐあまりリストもまたイエンジェイェヴィチ夫妻の諍いに巻き込まれた一人だったのではないでしょうか。

また、この伝記は「あることないこと書かれている」ともいわれますが、信ぴょう性という意味では他の伝記も似たようなものなのではないでしょうか。いずれにせよ数多く出ているショパン伝の中で最も古く、一番最初に出されたこの偉大な“友情の書”は現在日本では絶版で、古本を探すか図書館に行かなければ読めません。アマゾンでペーパーバックを探せといわれるかもしれませんが、やはり今の言葉で、日本語で読みたいという気持ちがあるのは自分だけではないはずです。

追記:2021年に最新の日本語版が出ました!

※本の仕様や価格は当時のものです。最新情報は購入サイト等でご確認ください。(ショパンの本棚管理人)

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